ブライダルアイテム制作|ブライダルワークス Photoria(フォトリア) ブライダルワークス Photoriaでは富山市を拠点に活動するデザイナーyucoが、ブライダル関係の仕事と紙面デザインの仕事の経験を生かし、ウェルカムボード・プロフィールパンフレット・ブライダル新聞など、ウェディングのペーパーアイテムを中心に、ECサイトのバナー制作、商品登録作業まで、幅広いデザイン制作を行っています。

ブライダルストーリー_止まっていた時間が動き出す日

 

挙式まで、あと四十分。

 

支度を終え、鏡の前に立つ新郎・颯太の姿があった。

 

そこへ新婦の奈緒が入ってくると、無言で何かを差し出した。

 

「お義父さんが、ガーデンで待ってるよ」

 

それだけ言って、颯太の手にそっと握らせた。

 

「えっ、何?」

 

奈緒は答えず、颯太を見つめている。

 

颯太の手の上には、一つの野球ボールがあった。

 

表面には薄く土の色が残り、縫い目も少し擦れている。

 

颯太には、そのボールに見覚えがあった。

 

消えかけた文字で、小さく「颯太」と書かれている。

 

それは父・和夫が、小学生だった颯太のために、一球ずつ名前を書いてくれたボールだった。

 

「どうして、これを……」

 

十年以上、野球から離れていた颯太の胸に、忘れたはずの音がよみがえる。

 

颯太はボールを握ったまま、ガーデンへ続く扉を見つめた。

 

▪️▪️▪️▪️▪️▪️

 

颯太は、小学生の頃から野球が大好きだった。

 

仕事を終えた和夫が玄関を開けると、

 

颯太はグローブを持って奥の部屋から急いで飛び出してきた

 

「おかえり、父さん!十球だけやろうよ!」

 

「今日もやるか?十球じゃ済まないだろ?」

 

和夫はニコニコしながら作業着のままグローブをはめ、

 

街灯がともるまで息子のボールを受け続けた。

 

和夫もまた、野球選手になることを夢見ていた。

 

その夢は叶わなかったが、息子の颯太が試合で活躍することが何より嬉しかった。

 

仕事から帰って息子とキャッチボールをする時間は、和夫にとって日々の楽しみでもあった。

 

中学生になった颯太はキャプテンを任され、チームを地区大会の優勝へ導くほど頭角を現した。

 

大会では、優秀選手として表彰もされた。

 

「次は甲子園だな」

 

和夫も颯太も、本気でそう思っていた。

 

高校は、野球の強豪校へ進んだ。

 

ところが、どれだけ練習しても、周りには自分より優れた選手が何人もいた。

 

颯太の名前が、レギュラーとして呼ばれることはなかった。

 

 

仲間たちがグラウンドで戦う姿を、颯太は応援席から見つめることしかできなかった。

 

それ以来、颯太がグローブを手にすることはなくなった。

 

友達と遊び、ゲームをする時間が増え、野球の話さえしなくなった。

 

まるで、野球をしていた頃の自分を消してしまうかのような生活だった。

 

高校の同級生だった奈緒は、その頃の颯太を知っていた。

 

父の期待に応えられなかった自分を、誰よりも颯太自身が責めていたことも。

 

▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️

 

颯太がガーデンへ出ると、タキシード姿の父が立っていた。

その手には、使い込まれた二つのグローブがあった。

 

一つは父のもの。

 

もう一つは、高校最後の日から物置にしまわれていた、颯太のグローブだった。

 

「懐かしい……。まだあったんだ」

 

颯太が言うと、父は照れくさそうな表情で答えた。

 

「当たり前だろ。持ち主の許可なしに、処分はできんからな」

 

二人はグローブをはめ、少し距離を取って向かい合った。

 

颯太がゆっくりとボールを投げる。

 

バシッと音を立て、父のグローブに収まった。

 

その瞬間、小学生の頃の記憶がよみがえる。

 

 

 

仕事帰りの父の作業着姿。

 

暗くなるまで続いた、二人だけのキャッチボール。

 

どんな球でも、しっかり受け止めてくれた父の姿。

 

最初はぎこちなかった二人の動きが、少しずつ昔のリズムを取り戻していく。

 

「ははっ、父さん、腕が上がらなくなったな」

 

颯太が冗談めかして言うと、父は少し遅れて笑った。

 

「お前こそ、球が軽くなったんじゃないか?」

 

そう言って和夫が投げ返したボールは、まっすぐ颯太のもとへ届いた。

 

何度目かのボールを受けたあと、和夫はすぐには投げ返さなかった。

 

手の中のボールをしばらく眺めてから、静かに言った。

 

「俺が見たかったのは、本当は甲子園じゃない」

 

そして顔を上げ、颯太をまっすぐに見つめた。

 

「お前が、野球を楽しんでいる姿だ」

 

その一言に、颯太は目の奥が熱くなるのを感じた。

 

颯太は、初めて気づいた。

 

――父もずっと、同じ場所で止まっていたのかもしれない。

 

父は今日まで、この瞬間を待っていてくれたのだ。

 

颯太はうつむき、グローブで目元を隠した。

 

▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️

 

結婚式は、新しい家族と未来へ歩き始める日

 

そして、止まっていた時間が、そっと動き出す日でもあります

 

結婚式は未来を誓うだけでなく、これまで言葉にできなかった想いを

 

、大切な人へ届けられる日でもあります。

 

一組一組にある家族の物語が、心に残るかたちで結ばれますように。

 

ブライダルワークスPhotoriaは、おふたりらしい想いの伝え方を大切にしています。

 

 

 

 

 

 

 

 

コメントは受け付けていません。

特集

ブライダルアイテム制作|ブライダルワークス Photoria(フォトリア) ブライダルワークス Photoriaでは富山市を拠点に活動するデザイナーyucoが、ブライダル関係の仕事と紙面デザインの仕事の経験を生かし、ウェルカムボード・プロフィールパンフレット・ブライダル新聞など、ウェディングのペーパーアイテムを中心に、ECサイトのバナー制作、商品登録作業まで、幅広いデザイン制作を行っています。

〒939-8045
富山県富山市本郷町

090-2838-5257

9:00〜17:00 土日祝を除く